8人の女たちの感想

ツイッターでおすすめしてもらった映画の感想を書いていきます。
内容に触れるので部分的にネタバレもすると思います、知りたくない方は注意。

最初はフランソワ・オゾン監督の『8人の女たち』。推薦者はでこ彦(@decohico)さん。
雪深く閉ざされた田舎の家で起きた殺人。殺されたのはその家の主人で、その場に居合わせた家族や使用人、8人の女たちがお互いを疑って探り合うが──みたいなあらすじ。

長女シュゾン役のヴィルジニー・ルドワイヤンがとにかく可愛かったです。後で検索したら自分の同い年(40歳)でちょっとショックだった。あとメイド役のエマニュエル・ベアールがエロい!注射をするシーンがあって、ベロを出してグサッとやるんだけど、エッチすぎて巻き戻して3回見ました。女優たちのファッションがすごくおしゃれ。若い女は若いなりに、歳をとった女もまたそれなりに美しく着飾っていて、年齢や体型にそぐう服装ってあるんだなと改めて思った。

冒頭のクレジット画面の背景がキラキラした宝飾品で、その画面がいかにもテレビ的な“VTR”という感じの画質だったので「向こうにも昼ドラみたいなものがあって、そういうのへのオマージュ的な映画なのかな」と思いながら観始めました。室内劇、一夜の出来事ということから舞台を意識してるのかなとも思った。ストーリーも色んなことが起きるんだけど、どのプロットもソープオペラにはよくあるような内容で、ある意味では全てが描いた餅であり書割りなんですということを自ら表明しているようなところがある。

女優たちの演技もオーバーアクションなんですよね、それがこの映画の書割りチックな諸設定にすごく合っている。役というよりもキャラっぽいというか。皆、人生についてのセリフや苦い言葉を口にするんだけど、どこか(だが意識された)作り物っぽさがあって、「あ、人形劇をやりたいのかもしれない」と思いました。パペットムービーやテレビの人形劇が僕はわりと好きで、たまに本当の生き物みたいに見える瞬間があるじゃないですか、あれを逆に人間でやろうとしているのかも知れないと思ってワクワクした。そういう映画もたまにあって、やっぱり好きなので。たとえばリヴェットの『セリーヌとジュリーは舟で行く』の劇中劇とかね。ていうかリヴェットの映画は全部そうな気もするけど。

で、観てたらやっぱりその瞬間がきました。歌うシーンですね。のっぺりとした書割りを背景に動き喋っていた美しいだけの人形が、命を宿したように感情を声にする。人はみなそれぞれが各々の人生の主人公で、そこにある悲しみや美しさはその本人にしか語れない……そんなブルース(シャンソンですが)を歌い出す。その瞬間に、描かれた女たちが二次元から三次元に浮かび上がるような驚きがありました。またいいのが、歌い終えると女が人形に戻っていくんだよね。スポットの当たる、本当の意味で生きている時間はそう長いものではない、という教訓まで含んでいるようにさえ思われた。

フランソワ・オゾン監督はきっと賢くてスケベな人なんだろうな〜と思います。女を可愛く撮っていればそれだけでそれはいい映画だなっていつも思うのですが、女を残酷に撮るのはそれ以上。面白かったです。