思春期

中学・高校を男子校で過ごしたので、その六年間、母親を除いた女性とはほとんど口をききませんでした。今でも女性と話すのは本当に緊張します。中二か中三のとき、小学校の同級生だった近所のNさんとたまたま帰り道が重なり、「高校どうすると?」みたいな会話を10分ほど交わしたのを憶えてる。その10分間を、その後何度も頭のなかで反芻しました。ガムに例えると、味が消えて、ガムそのものが消えるくらい噛み続けた。

男子校とはいっても他校の彼女や女友達がいる同級生も(少数だけど)当然いたし、文化祭や体育祭、聖書研究会などのイベントで校内に女子がくることもあった。そういうときは、見ないふりをして「女なんかいない!」とばかりにわき目もふらずに横を通り過ぎる。そうでもしないと緊張で我を失ってしまいそうだった。ただ横は通り過ぎたかったので、必ずそのようにしました。モテやセックスが絡まないせいか、学校内のカーストは比較的ゆるかったと思う。大雨の日に校庭で全裸でサッカーをしたり、教室の電気のスイッチを壊して、むき出しにした電極の端を輪になって握ってみんなで感電したり(人数が多いとあまりしびれない)、ほぼ平和な毎日を過ごしていました。

ある日「お前の写真くれん?」と同級生に声をかけられた。他校の女生徒が欲しがっているらしい、おれの写真を。当時はSNSっていうかインターネット自体がなかったのでこういうことがあったのかも知れない。降って湧いたモテチャンスにうろたえたおれは、考えに考えた末、植物園で撮ったハニワとニワトリの写真を渡しました。「おれの(撮った)写真」ということで。当然何のリアクションもなく、その後無事に童貞を守って卒業しました。

そういう思春期を送ったせいで、女性への接し方がよくわからないおじさんになってしまった。あと子どもの頃に漫画を禁止されていた反動で38歳になった今でもジャンプを読んでいます。